プロフィール
『就職四季報』編集長 データ事業局 データベース第四部
K.O.
1978年東京都生まれ。成城大学経済学部経営学科を卒業後、2006年に東洋経済新報社入社。 『会社四季報』などに掲載するデータの調査・編集に携わり、その後金融機関を中心にデータ営業も担当。19年1月より現職。東京ヤクルトスワローズファンでシーズン中は神宮球場に傘を持って応援に行く。
まずは、『就職四季報』の編集長のお仕事内容を教えてください
実は、編集長らしい仕事ってまだそんなにしていません。というのも、編集長に就任したのが2019年1月で、ようやく1カ月たったくらいです。今は前任の編集長からの引き継ぎや『就職四季報』の活用方法などを大学で講演したり、企業の掲載要望や読者からの問い合わせの対応などをしたりしています。 『就職四季報』を簡単に紹介すると、企業に直接調査したデータを掲載しています。就職活動のスケジュールにもよりますが、夏ごろに調査票を企業に送付し、秋ごろまで回答の内容を取材・編集し、11月下旬に発売という流れになっています。 『就職四季報』は当社のなかでも、大学生という読者の年齢層が1番若い媒体です。つまり、『就職四季報』は当社を知っていただく最初の入り口なので、その責任は大きいと思っています。
以前は営業職にいらっしゃったんですよね。その経験が現在のお仕事に活かされていると感じるときはありますか?
データ事業局は当社のなかでも独特で、営業職以外のほぼ全員がデスクワークです。そのため営業以外の人間が、データを利用するユーザー側の声を聞く機会が非常に少ないのが現状です。 ですが、営業は相手が求めているものを聞くのが仕事です。営業時代のこの経験で、「ユーザーの声」の大切さをあらためて実感することできました。それが、「読者目線」という編集部のポリシーに活きていると思います。
「読者目線」とは、具体的にどういったことでしょうか。
例えば、『就職四季報 企業研究・インターンシップ版』の調査時期の見直しです。 これまで、『就職四季報 企業研究・インターンシップ版』(毎年5月下旬発売)は、前年の夏に調査した内容を掲載していました。これだと情報を取得してからユーザーに届くまでおよそ1年間のタイムラグがあります。 しかし、それだとユーザーにとっては、魅力的ではないですよね。内容をより鮮度の高い情報にするために、今まさに奔走しているところです。
「読者目線」はデータ事業局だけでなく全社的に大切なことですよね。データ事業局にはどんな人が向いていますか?
当社は出版社ですが、いわゆる学生さんが想像するような「出版社」に入りたい人には、データ事業局は向いていないかもしれません。スクープ記事をだす、ベストセラーを作りあげるといったことは当社の中でもデータ事業局では難しいかなと思います。 データ事業局のほぼ全員が、朝出社して夜帰宅するまでひたすらパソコンに向かい、データとにらめっこの毎日です。事務作業に近いですよね(笑)。なので「こつこつ」とした作業に抵抗感がない人に向いているかもしれません。 それと、「チームワーク」を大切にできる人ですね。例えば、『就職四季報』は総合版・女子版・優良中堅版全てあわせて約5000社掲載しています。編集部だけでも繁忙期は20人近いスタッフとなり、他に編集局の業界を担当する記者が記事を執筆します。もちろん営業、宣伝、印刷の人たちも関わって作りあげていく媒体です。品質の高さが強みなので、読者にミスリードを与えないように様々なチェックを何度もします。これは、チームで取り組んでいるからこそできることです。
ウソの情報を流してくる企業とかも中にはありませんか?
ウソはないと思いますよ(苦笑)。企業からは『就職四季報』の調査に好意で協力していただいています。ただ回答の内容がおかしいなという時はありますね。例えば、残業時間を前年20時間と回答した企業が今年は2時間と回答してきた場合、チームで二重三重にもチェックをしているからこそ、おかしいなと見抜けるんです。疑問点や異常値を見つけた際には、何度も取材を試みて「正しい」情報を手に入れます。正直、企業も負担があると思います。 ただ、ユーザーが求めているのは「正しい」情報ですよね。いまの時代スマホひとつであらゆる情報がタダで手にはいります。そんな中で、お金を払って買っていただくためには、信頼できる情報を伝えていかなければなりません。そこで手を抜いてしまうと、信頼を落としてしまいます。そうなるとユーザーにもそっぽを向かれてしまいますし、企業も回答しなくなります。
最後に、今後編集長として『就職四季報』をどんな媒体にしたいか教えてください。
2018年10月に経団連が就職活動における、21年卒以降のスケジュール指針を出さないことを発表しました。もちろん今後は政府がルールを策定しますし、これまでも通年採用やインターンシップを活用した早期採用をしている企業もあります。しかし、学生も企業も大学にとって、これからの就職状況は今までよりも手探りの状況になっていくのではと思います。そうした中でも、『就職四季報』が有益な情報を出すことで、この就職状況を支えられるインフラを作っていければと考えています。
所属・役職は取材時時点のものです。
『就職四季報』編集長 データ事業局 データベース第四部
K.O.
1978年東京都生まれ。成城大学経済学部経営学科を卒業後、2006年に東洋経済新報社入社。 『会社四季報』などに掲載するデータの調査・編集に携わり、その後金融機関を中心にデータ営業も担当。19年1月より現職。東京ヤクルトスワローズファンでシーズン中は神宮球場に傘を持って応援に行く。
出版局 編集第二部
C.W.
これまでOさんとの接点は、社内バレーボール部の活動時のみ。そのためお仕事の話を伺うのは今回が初めてでした。データ事業局のイメージは「職人集団」でしたが、ただその道のエキスパートというわけでなく、その目線の先にはいつだって「読者」の存在があるということを知りました。私もOさんと同じ「本を編む者」として、読者目線の大切さを改めて実感できたインタビューでした。